はじめに
「ダッシュボードで全体の売上は見えるが、どのカテゴリのどの商品が伸びているのかがわからない」という声を聞くことがあります。
Looker Studioには「ドリルダウン」機能があり、グラフをクリックするだけで、大分類から中分類、中分類から小分類へと階層を掘り下げられます。EC分析では「カテゴリ → ブランド → 商品」のように段階的にデータを深掘りできるため、問題の特定が速くなります。
この記事では、ECサイトの分析に特化したドリルダウンダッシュボードの設計と構築手順を解説します。
ドリルダウン機能の概要
ドリルダウンは、1つのグラフに複数の階層(ディメンション)を設定し、クリックで階層を切り替える機能です。
ドリルダウンとフィルタの違い
| 機能 | 操作 | 影響範囲 |
|---|---|---|
| ドリルダウン | グラフ内でクリック | そのグラフの表示が階層変更 |
| フィルタ | コントロールで選択 | レポート全体のデータが絞り込み |
ドリルダウンはグラフ単位で動作するため、他のグラフに影響を与えません。フィルタと組み合わせることで、直感的な操作性と柔軟な分析の両立ができます。
EC分析に適したドリルダウン階層の設計
階層例1: 商品分析
カテゴリ(大分類)
→ ブランド(中分類)
→ 商品名(小分類)
階層例2: 地域分析
国
→ 都道府県
→ 市区町村
階層例3: 時間分析
年
→ 四半期
→ 月
→ 週
→ 日
階層例4: チャネル分析
チャネルグループ
→ 参照元/メディア
→ キャンペーン
実装手順: 売上のドリルダウングラフを作る
ステップ1: データソースの準備
BigQueryで、ドリルダウンに必要なディメンションを含むテーブルまたはビューを作成します。
CREATE OR REPLACE VIEW `project.dataset.ec_sales_drilldown` AS
SELECT
PARSE_DATE('%Y%m%d', event_date) AS date,
items.item_category AS category,
items.item_brand AS brand,
items.item_name AS product_name,
device.category AS device_type,
traffic_source.source AS source,
traffic_source.medium AS medium,
items.quantity AS quantity,
items.item_revenue AS revenue
FROM
`project.analytics_XXXXXXX.events_*`,
UNNEST(items) AS items
WHERE
event_name = 'purchase'
AND _TABLE_SUFFIX >= FORMAT_DATE('%Y%m%d', DATE_SUB(CURRENT_DATE(), INTERVAL 180 DAY))
ステップ2: Looker Studioでグラフを追加
- 棒グラフまたは円グラフを追加
- データソースに上記のビューを指定
ステップ3: ドリルダウンを有効化
- グラフを選択した状態で、右側の「設定」パネルを開く
- 「ディメンション」セクションで「ドリルダウン」のトグルをオンにする
- ディメンションを上から順に追加する
設定例(商品分析の場合):
ディメンション1: category(カテゴリ)
ディメンション2: brand(ブランド)
ディメンション3: product_name(商品名)
指標には SUM(revenue) と SUM(quantity) を設定します。
ステップ4: 動作確認
プレビューモードでグラフを確認します。
- 初期表示: カテゴリ別の売上が表示される
- カテゴリの棒をクリック: そのカテゴリ内のブランド別に切り替わる
- ブランドの棒をクリック: そのブランド内の商品別に切り替わる
- グラフ上部の矢印ボタンで上の階層に戻れる
応用: ドリルダウン × インタラクティブフィルタ
ドリルダウンに加えて、グラフのクリックで他のグラフをフィルタリングする「インタラクティブフィルタ」を組み合わせると、より強力なダッシュボードになります。
設定方法
- ドリルダウングラフを選択
- 右パネルの「インタラクション」タブを開く
- 「フィルタを適用」にチェックを入れる
これにより、ドリルダウンで特定のカテゴリをクリックすると、同じページの他のグラフも連動してフィルタされます。
構成例: EC分析ダッシュボード
┌──────────────────────────────────────────────┐
│ 日付フィルタ | デバイスフィルタ | チャネルフィルタ │
├──────────────────────────────────────────────┤
│ │
│ [売上推移グラフ(時系列)] │
│ │
├─────────────────────┬────────────────────────┤
│ [カテゴリ別売上] │ [デバイス別セッション] │
│ ドリルダウン: │ │
│ カテゴリ→ブランド→商品 │ │
├─────────────────────┴────────────────────────┤
│ │
│ [商品別売上テーブル] │
│ カテゴリ | ブランド | 商品名 | 売上 | 数量 | CVR │
│ │
└──────────────────────────────────────────────┘
カテゴリ別売上グラフでドリルダウン+クリックすると、売上推移グラフと商品テーブルが連動してフィルタされます。
ドリルダウンの注意点とベストプラクティス
階層は3〜4段階までにする
階層が深すぎると、閲覧者がどこにいるかわからなくなります。3〜4段階が実用的な上限です。
ドリルダウンの方向を明示する
グラフのタイトルやサブタイトルに「クリックで詳細を表示」といった説明を入れると、初めて使う人にも操作方法が伝わります。
タイトル例: カテゴリ別売上(クリックでブランド→商品に展開)
NULL値の対策をする
カテゴリやブランドが未設定の商品がある場合、ドリルダウンで「(not set)」が表示されます。BigQuery側でIFNULLを使って対処しておくときれいに表示されます。
IFNULL(items.item_category, '未分類') AS category,
IFNULL(items.item_brand, 'ノーブランド') AS brand
ドリルダウンできないグラフタイプ
以下のグラフタイプはドリルダウンに対応していません。
- スコアカード
- ブレットグラフ
- ゲージ
棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、テーブル、地図など、主要なグラフタイプでは使用可能です。
まとめ
ドリルダウン機能を活用すると、EC分析ダッシュボードの情報密度と操作性が向上します。
- 設計のポイント: ビジネスの意思決定に沿った階層を設計する
- 実装のポイント: BigQueryで適切なディメンションを準備し、Looker Studioのドリルダウン設定を有効化する
- 運用のポイント: インタラクティブフィルタと組み合わせて、直感的に操作できるダッシュボードにする
1つのダッシュボードで全体像から個別商品まで深掘りできる環境は、EC運営の意思決定スピードを大幅に改善します。